1本か2本の指でコードが弾ける、キーを変える(移調する)ことはボタン一つでできるインスタコード!
その唯一の弱点と言われてきた転調、それが「指1本の操作」で自由自在に操れることに気が付いてしまいました。この秘密を解くカギ、それは、「(キーをハ長調に設定した場合)イ短調(Am)とイ長調(A)を行き来する「同主調転調」にあります。イ短調の主音であるAmをAに変える操作はインスタコードでは「6番だけを押さえるAm」から「6番の隣の~」を一緒に抑えるだけなのです。
今こそ、「同主調転調」が入っている切ない曲を大いに演奏しましょう。同主調転調のある曲を大いに作りましょう。
カンツォーネ「帰れソレントへ」の世界、歌詞とコードの複雑な関係
ソレントは、イタリアのナポリ湾の半島の先端、対岸にヴェスヴィオ山を望む、風光明媚なリゾート地。の舞台でで、去っていこうとする恋人に「帰ってきておくれ」と歌う男性、というイメージの歌です。20世紀初めにインスタコードを弾いて歌った訳がないのだけれど、下の絵のような世界ですね。


「帰れソレントへ」の転調と切なさの秘密はこの図で納得 「4」(♭VI)のつくる影の効果まで分かる

上の図は1番の歌詞を、イタリア語(上段)、イタリア語のカタカナ読み(中段)、日本語による言葉の意味(下段)の3段で示し、歌詞の上にコードの度数を示しています。キーは#⃣も♭も無いハ長調に合わせています。ハ長調なら、C(トニック;Ⅰ)ーF(サブドミナント;Ⅳ)ーG(ドミナント;Ⅴ)ーC(トニック;Ⅰ)、度数で表せば、1ー4ー5ー1なので、CやGがあるかと思いきや、そうではありません。イ短調で始まり転調した時はイ長調になる「同主調転調」だからです。「1ー4ー5ー1」のコード進行はイ長調では「AーDーEーA」ですのでCやGは現れないのです。
美しい情景を短調で歌うことで余計に切なくなる1行目
1行目はイ短調で始まっています。「6-6-2-6」ですから、「AmーAmーDmーAm」、短調の「Ⅰ(トニック)ーi(トニック)ーii(サブドミナント)ーi(トニック)の基本的なコード進行で、切なさや哀愁を表現しています。「見てごらん、海がなんて美しいか, これほどまでに、多くの情熱を呼び起こす」という意味の「一見明るそうな」歌詞を切なさや哀愁を表現する短調のコード進行で歌っていることで、余計に切なくなるのですね。
君を想い、夢を見てしまう私の心を歌う、複雑なコード進行の2行目
2行目は、「君が、君を想う者の心に働きかけ、目覚めたままで、夢を見させてしまうように」という意味の歌詞です。イ短調の中で「明るさを演出するF」から始まりAmで落ち着き、和声的短音階の響きのEで緊張感を持ってAmに進むと思いきやイ長調の主音Aに転調して明るい響きに変わります。歌っている「私」は翻弄されていますね。そして、次の二つの行のイ長調の明るいメロディーとコード進行につながっています。「3~(E)」がイ短調のドミナントであると同時にイ長調のドミナントでもあるというところがミソで、緊張感を生み出しつつ、Amに進行して落ち着くのか、Aに進行して一気に明るくなるのかが「3~(E)」の時点では分からないのです。そこで「緑色の字」で表しています。
明るい情景描写にマッチした長調のコード進行の3、4行目
3行目の歌詞の意味は、「見て、この庭園を眺めてごらん、感じて、このオレンジの花々の香りを」、4行目の歌詞の意味は「これほどまでに繊細な香りが、心の一番深いところまで染み渡っていく」ですから明るい情景描写が続きます。3行目mp4行目も「6~ー7-3~ー6(AーBmーEーA)というイ長調の「ⅠーⅡmーⅤーⅠ」のコード進行で、明るく爽やかな響きですから、歌詞の意味と一致しています。BmはDm(サブドミナントマイナー)の代理です。
明るい長調のコードの最後に「4(F)」(♭V)で一気に影が差す5行目
5行目の歌詞の意味は、「それなのに君は「私は行くわ、さよなら」と言う、この心から遠く離れていく…」なのに、3、4行目と同じように「6~ー7-3~」と進むのです。ところが、「4(F)」が最後に現れることによって一気に影が差すコード進行になり歌詞の意味に合ったコード進行になります。
長調の中に現れる「4(F)」は「♭VI」は「フラット・シックス」と呼ばれています。「長調の中の♭VIの効果」でGooigle検索すると、「AIによる概要」には、「明るい長調の響きの中に、急に短調の響きが混ざることで、感動的、あるいはエモーショナルな雰囲気を作り出します」や、「偽終止(弱終止): ドミナント(V)からトニック(I)ではなく、♭VIへ進むことで、解決を遅らせる「偽終止」的な効果が得られ、物語の継続や余韻を持たせることができます」や、「長調のコード進行の中では、その楽曲を一時的に同主短調へ引き込むため、緊迫感や「ナポリの六」に似た劇的な瞬間を演出するのにも適しています。」との記述があります。
短調から長調に転じる6~7行目と短調で叫ぶ8行目:歌詞にそぐわない長調が余計に切なさを演出している
歌詞に合わせると6~8行目は全て短調でも良さそうでうが、7行目が長調でゆっくりと切々とうことによって、8行目の「生きさせてくれ」と言う叫びが余計に切実なものになっています。
J-POPでもシューベルトの歌曲でも「同主調転調」
「同主調転調」はJ-POPでも効果的に使われる転調です。例えば久保田早紀「異邦人」。「空と海との」のところ(というか、その直前)で、ほとんど「帰れソレントへ」と同じ「6~」から長調になって明るくなっています。
シューベルトの「冬の旅」に収められている「菩提樹」や「春の夢」では、「同主調転調」が、「幸福と孤独の対比」、「夢と現実の対比」、「死による永遠の安息を長調で奏でる」、「心だけの幸福を長調で表す」などを行っています。このことは「帰れソレント」の同主調転調を知ったことで分かりました。高校生から大学生の頃に大好きだった曲の秘密は、まさに「ここにあった」のです。
インスタコード奏者は「同主調転調」で作曲しよう!
他の楽器では高い技術レベルが必要な同主調転調。インスタコードでは「~」ボタン一つの追加で可能です。
今こそ、「同主調転調はインスタコードの十八番だから、それが入っている切ない曲を大いに演奏しましょう。同主調転調のある曲を大いに作りましょう。」と提案します。
by インスタコード 語りすと ヒデ